東海科学機器協会の会報

No.346 2013 夏号

第25回中小企業優秀新技術・新製品賞を受賞して

㈱三弘 岩井 重樹

 この度、我社PB製品のダイレクト・イメージング・インデンターが、りそな中小企業振興財団が主催する「第25回中小企業優秀新技術・新製品賞」を受賞しました。今回の受賞は頂いた私自身も期待しておらず、望外の喜びでした。受賞は、もとより弊社だけの力で獲得できるものではなく、日ごろから皆様のご支援あってのことと身にしみて感じております。この場をお借りして、選考委員会の皆様,ご推薦頂いた先生方,お世話になっている皆様に御礼申し上げます。
 この賞は、りそな中小企業振興財団が、中小企業の技術振興を図り、わが国産業の発展に寄与することを目的に毎年1回優秀な新技術・新製品に対する表彰を日刊工業新聞社と共催で実施しているもので、今回の応募総数は420件に上ります。

101 我社は創立60周年の節目の年に、「計測技術で日本の未来を創る」というビジョンを掲げました。そして弊社が培った営業力・技術力・情報収集力を生かすことの出来る新たな取り組みとしてファブレスカンパニーを目指す方針を立て、今回受賞対象となったダイレクト・イメージング・インデンターDII(写真下)の開発を開始しました。

 我社は、さまざまな特注機を製作してきた経緯こそありましたが、画期的な製品を生み出す発想力や潜在的な市場ニーズに関する情報を持ち合わせていないため、我々のお客様でもある産業技術総合研究所(宮島達也主任研究員)との共同開発を始めました。独立行政法人となった同法人が、所有するシーズで社会貢献を目指したいとの要望を、多くのお客様方のニーズに橋渡しができるのではという商社ならではの着眼点で、最新技術を用いた未だ世の中に存在しない装置を具現化することに成功しました。

 本装置は試料物性を計測する力学特性試験装置になります。今までの手法は圧子とよばれる測定子を試料の表面に圧入させ、計測された圧入深さと荷重の関係から物性値を導き出す手法でしたが、この手法では高分子や延性材料を測定した場合に誤差が出ることが知られています。本装置最大の特徴は、接触面積を直接観察する事により、誤差の出ない厳密な計測が出来ることにあります。この画期的な手法は産業技術総合研究所が持つシーズであり、我社の技術で装置完成にこぎつけました。

 これまで、カタログ製品を製作した経験の無い我社にとり、完成までの道のりは想像することが難しいほどのハプニングの連続で、非常に大変なものでした。しかしながら、手法開発の頃から現在までいろいろな有識者や共同研究者から多くのアドバイスやコメントをいただけたことは、製品化を進める上で大きな励みとなりました。このような賞を頂く事ができ、少しは恩返しが出来たのではと嬉しく思います。

11 また、授賞式では、審査委員長吉川弘之様(科学技術振興機構研究開発戦略センター長)(写真上)から今回の受賞に際し「どれもアイデアや工夫に溢れ、それぞれの分野で高い評価に値するレベルのものばかりであり、わが国の技術振興と産業経済の発展に大きく貢献されているものである。今の日本は、失われた20年と言われる不況からの脱却を図り、経済復興への期待が高まっている。製造業を中心とする産業が、現政権の政策にいかに応答するの
かが責務と考える。これからは、従来のような大企業ではなく、過去の成功体験にとらわれない独立・自営の中堅・中小企業が次々と新技術や製品を開発していくことこそが技術シーズ
の具現化であり、国民の幸福追求につながるものと考えられ、中小企業がキーになると思う」とのコメントを頂きました。
 我社が「計測技術で日本の未来を創ること」をビジョンに邁進してきた取り組みが間違っていなかったと評価された気がして感無量でした。この感激を胸に刻み、受賞したこの賞に恥じぬように少しでも応えることができるよう、日々精進努力する所存です。
 今後は、世の中で必要とされている様々なニーズに対応すべく製品の質・機能アップを着実に実現し、まだまだ国際競争力の高い日本の素材研究開発の為に役に立ちたいと考えております。必ずや計測技術でこれからの日本の明るい未来を創り上げて行きます。今後とも,
みなさまのご指導のほど宜しくお願い致します。

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