東海科学機器協会の会報

No.286 2001 4-6月号

[ かきゃ~あんたも ] ISO認証は、小さく取って大きく育てる

かきゃ~あんたも
ISO認証は、小さく取って大きく育てる
株式会社ヤガミ  ISO推進室


 当社では、品質保証の国際規格「ISO9001」の認証を取得すべく、一昨年12月より社内プロジェクトを立ち上げ、去る1月29日に「理科学施設設備(実験台)の設計・開発および製造」の品質システムで無事認証を得ることができました。今後取得をご検討されるTKK会員企業の皆様に何らかのご参考になればと思い、以下、取得にいたるまでのエピソード等を紹介させていただきます。 

1.キックオフ

 ISO9000シリーズでは、認証取得範囲を企業の自由意思で決定することができるため、最初は対象とする組織や製品を少なくして、認証取得後に対象範囲を拡大するという取り組みの方が効率的であり、また、そうすることで品質システムの内容自体も十分に時間をかけて検討することができます。そこで当社でも、初回は特定の事業分野のみを対象とし、「小さく取って大きく育てる」方針で進めることとしました。また、1年計画の短期決戦とするため、外部に専門コンサルタントを、内部に管理責任者をそれぞれ置いて、全12名のプロジェクト体制でキックオフすることとしました。

2.前 半 戦

 スタートはプロジェクト員の教育と現状分析から入りました。社内における導入教育でISOのルールを知り、月1~2回の外部コンサルティングと併せてISO独特の用語を理解していきました。
 その後、既存の社内規程とコンサルタントのサンプルを基に、ISOの要求に合わせた新システムを構築すると同時に、関係する書類づくりに着手。当社の場合は、設計管理(製品開発工程の審査・検証・妥当性確認)や検査管理(現状に合う最適な品質を検査する基準)に関する帳票類がこれまで体系化されてきておらず、その作成にとりわけ多くの時間を割かねばなりませんでした。

3.後 半 戦

 後半の課題は、構築した新システムの運用化と内部品質監査員の養成です。まずはプロジェクト員自身が内部品質監査員としての教育・認証を受け、その後すぐに内部品質監査を行ってISO要求基準と各業務実態との整合性をチェックしていきました。当初、各現場では監査後1ヵ月間で是正処置を行う予定でしたが、ちょうど夏場の繁忙期と重なってしまい、充分な対応ができないまま9月の予備審査を迎えることとなりました。

4.予備審査・本審査

 9月の予備審査では、総評として「システムはすっきりしているが、機能していませんね」との指摘を受け、各現場への浸透の不備を見抜かれてしまいました。この言葉が効いて、その後2ヵ月間、支店・営業所も加わって体制を立て直し、対象者全員に対してISOのねらいと特徴を改めて把握させ、内部品質監査についての教育訓練もこれまで以上に積極的に行いました。その甲斐あってか、12月の本審査では軽微な不適合の指摘が3件だけで済み、その処置を2週間程度で終えて、無事1月に吉報を聞くことができました。

5.今後の対応

  ISOは「取ってからがスタート」とよく言われるように3年ごとに更新審査があり、維持・改善していくことが難しいとされています。そのためにも内部品質監査の強化および外部定期監査によるフォローはもちろん、関係者全員がねらいを忘れず、取り決めた内容を遵守・継続していくことが大切です。当社においても今回のISO取得を契機に、一層の体質改善・効率化に取り組んでいきたいと考えております。