東海科学機器協会の会報

No.337 2011 秋号

TKK工場見学会2011


平成23年度7月21日

工場見学会実施報告
ミツカンの博物館「酢の里」
INAXの博物館「INAXライブミュージアム」

工場見学実行委員長 八代 智


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 7月21日(木)に工場見学会として、酢で有名なミツカンの博物館「酢の里」と住宅用陶器製品で有名なINAXの博物館「INAXライブミュージアム」を見学しました。
 参加者総数18名でした。いずれも創業の地に創業記念要素を反映した博物館を建設されていました。ビジネスでは、企業の現在の姿を知ることは重要ですが、その企業の創業の精神・姿を知ることも我々のビジネス活動に深みを与えてくれるのではないでしょうか。

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 さて、「酢の里」について。酢は人類がつくった最古の調味料といわれています。酢は5世紀頃に中国から製造方法が伝わりました。酢の原料は、酢が製造される国・地域で広く栽培されている穀物類が使用されます。日本の酢は長い間、米から製造されていましたが、ミツカンの創業者が1804年(江戸時代)に酒粕を原料にした酢の製造に成功しました。当時、江戸で人気を博し始めていた「にぎりずし」によく合い、ミツカンの酢は全国に広がりました。
 創業の地・半田にある本社工場には運河が築かれており、完成した酢は船で江戸などに運ばれたとのことです。
 半田にある工場は、現在では少々機械化されましたが、醸造蔵の採光窓を熟練した職人の感覚で開閉して温度・湿度等の環境管理をして、酢酸菌がつくる膜(酢酸菌膜)を活用して製造する方法は基本的に変化していません。現代風に表現すると再生可能エネルギーを使用して、バイオテクノロジー技術を駆使した製造品といえます。古い製造法を守ってきたことで、最先端の製造法にたどり着いたといえるかもしれません。

 また、INAXライブミュージアムは、5つの博物館からなっています。その中から「世界のタイル博物館」と「窯のある広場・資料館」を見学しました。「世界のタイル博物館」は、住宅や室内を彩る装飾タイルを約1000枚展示しています。同博物館の装飾タイルコレクション総数は7000点もあります。中東地域、欧州、中国及び日本で製造された装飾タイルが、国・地域別かつ年代別に展示された大規模博物館でした。
 INAXは、現在では便器など住生活陶器製品メーカーとして有名ですが、創業当時は地中に埋める「土管」を製造していました。創業の地・常滑は、昔は土管製造の一大産地でした。大きな土管を製造するには大きな窯が必要であり、また、大きな窯を使用するには大きく高い煙突が必要です。
 常滑市で土管製造が盛んであった時代には、数十本の高い煙突が林立する風景が見られました。その窯と煙突の一つがこの博物館に移築保存されており、これが「窯のある広場・資料館」になっています。巨大な窯の中で温度分布を均一にするために、煙など廃棄物を地下に導き隣接する煙突で排出する技術は興味深いものでした。
 酢とタイル、いずれも基本技術は外来でした。そしていずれも技術を学んだ日本人が「日本独自製品」をつくりました。その「日本製」は、高い機能と品質を世界の人々に認めていただける製品になりました。そのプロセスには、人の情熱と科学技術が寄与しています。
 来年度も工場見学会の企画をしますので多くの会員の参加をお願い申し上げます。

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