東海科学機器協会の会報

No.298 2003 冬号

「中部の技術シーズ」を活用した産学官連携による研究開発の推進 No.1 財団法人 中部科学技術センターの取り組み

財団法人 中部科学技術センター
産学官連携コーディネーター 安田匡一郎


 中部科学技術センターの概要、中部の技術シーズ(現在中部経済産業局が事務局の中部技術開発支援団体会議が連携して、中部8県の大学や国公設試から収集している産学官共同研究開発技術シーズ)、および技術シーズを活用した中部科学技術センターの産学官連携による研究開発への取り組みなどについて紹介させていただきます。

1.財団法人・中部科学技術センターについて
 当財団は、科学技術の振興に関する諸事業を総合的且つ効果的に推進し、科学技術水準の向上を図り、もって中部地域産業の発展に寄与することを目的として、昭和35年科学技術庁所管の(財)日本科学技術振興財団の中部地方本部として発足しました。その後昭和42年分離独立して財団法人中部科学技術センターとなり、昭和56年通商産業省が主務官庁に加わり、現在主務官庁は文部科学省と経済産業省の共官となっています。
 現在の事業は、イ.科学技術交流事業、ロ.研究開発促進事業、ハ.普及啓発事業、ニ.産業クラスター計画支援事業、ホ.科学技術功労者の表彰及び推薦、ヘ.科学館への協力、ト.科学技術諸団体の支援と連携などとなっています。特に、新産業創造に不可欠な創造的研究開発推進に向けては、3.で述べますように、「中部の技術シーズ」を活用した様々な産学官連携活動の取り組みと共に、中部科学技術センター独自の共同プロジェクトとして、マイクロメカトロニクス研究開発センターを有し、インテリジェント生活支援ネットワークシステム技術の研究開発等の研究を行っています。また産業クラスター計画の支援では、中部経済産業局主管の「東海ものづくり創生プロジェクト」の推進機関である東海ものづくり創生協議会および「デジタルビット産業創生プロジェクト」の推進機関の中部デジタルビット産業創生協議会それぞれの事務局も務め、産業クラスター計画を推進しています。当財団の特徴は中部の名を冠して、愛知、岐阜、三重、石川、富山に加えて福井、静岡および長野の8県の広域を対象としていることです。
 当財団は、賛助会員制度を設けており、会員の方には、情報誌「CSTCニュース」のご送付、ならびに当財団が主催するシンポジウム(CSTCフォーラム)、施設見学会等のご案内をしております。

2.産学官共同研究開発技術シーズ
(「中部の技術シーズ」)

 わが国経済の活力の維持・発展のためには大学等の技術シーズを活用し、独創的な技術による技術革新および新規産業の創出を図ることが重要であるとされています。
 本シーズは、平成13年度から中部経済産業局(事務局)の指導の下に中部技術開発支援団体会議の各参加機関が連携して、当地域(中部8県)の大学、高等専門学校、国立研究所および公設試験研究機関等から優れた技術シーズを提供していただき、域内企業への紹介、企業への技術移転・産学共同研究等のマッチング、地域コンソーシアム形成に向けてのコーディネート活動等に活用させていただいているものです。
 各技術シーズ票は、1シーズがA4の1頁に記載されており、その一例は別表(「産学官共同研究開発技術シーズ調査票」)の通りです。各欄の内容は、まず「研究開発テーマ」(シーズ)、「技術分野の区分」(8分野:材料、バイオテクノロジー、情報通信、機械、医療・福祉、エネルギー、環境、その他)、「研究段階」(基礎~応用)および「キーワード」があります。続いて提案者のデータベース欄ともいうべき「提案者氏名」、「所属機関名」、「電話番号」、「FAX番号」、「Eメールアドレス」、「ホームページURL」があり、これらの項は、本シーズに関する問い合わせに限らず、企業活動において必要な事態に随時大学等とコンタクトをとり、企業発展に役立てていただけるものです。
 本文としては、「研究の目的」(研究開発の目的、最終的な事業化分野)、「研究開発の内容(概要)」、「新規性・独創性・優位性」、「地域経済への波及効果」(本研究によって期待される成果・効果・地域への貢献、産業界へのインパクトなど)、「実用化への見通し」(共同研究の相手となる企業・業界、実用化になるまでの期間等)、さらに「関連所有権」記載の欄があります。すなわち企業が共同研究や技術移転による事業化を考える際に、また各支援機関等が地域新生コンソーシアム等のプロジェクトへの提案を前提に研究会等を組織する場合に有用な資料となるよう配慮されています。
 上記支援団体会議への現在の参加機関は、(財)中部科学技術センター、(財)名古屋産業科学研究所、(財)東海産業技術振興財団、(財)北陸産業活性化センター、(財)科学技術交流財団、(財)岐阜県研究開発財団、(財)三重県産業支援センター、(財)富山県新世紀産業機構、(財)石川県産業創出支援機構、および(財)名古屋都市産業振興公社の10機関です。
 15年度中部8県の49の大学や公設研究機関から提供された技術シーズは、15年度新規および更新分が423シーズ、継続掲載分が172で、合計595 のシーズが中部の技術シーズとして掲載されています。これらのシーズは各機関によってそれぞれ独自の企画のもとに活用されます。事務局の中部経済産業局では、全技術シーズ票の入った「CD-ROM」および「タイトルの一覧表」を作成し、各機関にも配布して積極的な活用を図っています。また本シーズは中部経済産業局の次のホームページで公開されています。

http://www.chubu.meti.go.jp/technology/page/seeds.htm

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