東海科学機器協会の会報

No.287 2001 秋号

サイエンスコーナー 環境分析について 第5次水質総量規制(窒素・リン)

株式会社堀場製作所 名古屋セールスオフィス所長 多聞 講一


 近年「ISO-14000」取得に向けて各企業が努力しており、ますます環境問題が重要なテーマになってきています。
 今回は、その中でも「水質総量規制(窒素・リン)」について報告いたします。
 環境行政は、環境省が定めた「環境基本計画」にそって総合的に取組みがなされています。目指すべき社会を「持続可能な社会」と位置づけて具体的な施策を行っています。
 閉鎖海域での総量規制については、昭和55年度の第1次規制からスタートしてきましたが、現在は第5次規制が始まっています。
 東海地区におきましても、伊勢湾が閉鎖海域の対象地区に指定されており、「窒素・リン」の総量規制が開始されます。
1)特定排出水の「窒素・リン」計測方法
環境省から示されている計測方法は下記の通りです。制度の概略は現在実施されているCODの総量規制に準じていますが、若干の違いをここでは説明します。
(1)排出量400m3/3日以上の事業所で設置が義務づけられる自動計測器の値は公的に使用することができる。
(2)排出量400m3/3日未満の事業所においては規模に応じて定期的に計測が必要である。(手分析が指定計測法)
(3)自動計測器の測定方法式に規定はなく、一定の精度基準を有する計測器ならどのような方式でも使用できる。(精度基準は現在検討されている。)
2)今後の予定
「窒素・リン」の総量規制は、まもなく国会の閣議決定を経て、測定項目・地域・海域の指定・総量削減方針が政令で告示される予定です。この後、各都道府県で知事が削減計画を総理大臣に届けて環境行政が施行されます。
 第5次総量規制の目標年度は、平成16年度ですから、新設・既設に対する猶予期間に差はあっても、各事業場での対応は平成16年3月末には完了する必要があります。
 水質総量規制は、私たちの生活(人為的な)汚濁が最大の原因によるものだと考えられています。特に閉鎖海域では窒素・リンによる富栄養化が進み、プランクトンの異常発生や赤潮の発生等が見られます。
 今回の水質総量規制(窒素・リン)は、廻りを海で囲まれた島国「日本」にとって重要な環境施策であると同時に、日常生活を見直す良い機会でもあります。次世代に残す良い環境社会を守っていきたいものです。
 最後に、科学機器の製造・販売を担当する我々にとっても環境問題は大いに責任ある対応が求められるものと思われます。

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