東海科学機器協会の会報

No.325 2009 春号

[ サイエンスコーナー ] ゴッホの名画に隠れた猫を理化学機器が発見!!

㈱堀場製作所 科学システム営業部NSOチーム 北村 健


1.はじめに
ゴッホ最晩年の作品「ドービニーの庭」をご存知ですか?本作品の謎について昨年歴史的大発見がなされたのですが、その発見に理化学機器が活躍しました。
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2.ドービニーの庭の謎とは?
油彩画「ドービニーの庭」にはほぼ同じ構図・大きさのものが2枚あり、1枚はひろしま美術館、もう一方はスイスのバーゼル美術館にあります。スイスの絵には左下に黒猫が描かれていますが、ひろしま美術館の絵には描かれておらず、「黒猫は消された?」、「最初から描かれていなかった?」など長年議論の的となっていました。

3.蛍光X線分析顕微鏡により
猫の存在が明らかに!
ひろしま美術館と吉備国際大学文化財総合研究センターは、昨年10月3日にひろしま作品にも当初は黒猫が描かれていたと発表しました。ひろしま作品には加筆され茶色く変色したと思われる跡があり、この部分を蛍光X線分析顕微鏡によって解析したところ、青色絵の具の主成分である鉄などの元素マッピング画像から、この加筆部分の下に猫の姿が描かれていることが確認されました。

 参照:asahi.com
 http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK200810030081.html

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4.文化財・出土品などに非破壊分析ができる  蛍光X線分析顕微鏡
貴重な試料も前処理なく非破壊で分析できるのが蛍光X線分析顕微鏡で、試料に含まれる元素やその濃度を測定することが可能です。
また、マッピング分析をすることでどこにどんな元素がどのように分布しているのか調べることができ、様々な分野で活躍しています。材料の組成分析や重要文化財・考古学サンプルなど貴重な試料の非破壊解析、最近ではRoHS/ELV規制等の有害元素分析などにも広く使用されています。

5.おわりに
今回、ゴッホの絵の謎の解明に蛍光X線分析顕微鏡が活躍しましたが、今後も目で見えないような様々な謎の解明に理化学機器が活躍していくことでしょう。

分析ご提供
学校法人高梁学園 吉備国際大学
大学院 文化財保存修復学研究所 研究科長
文化財総合研究センター長 下山 進様
財団法人ひろしま美術館様