東海科学機器協会の会報

No.342 2012 秋号

うさぎの大冒険

㈱テクノ西村 営業部 伊藤正彦

会員だより


小学一年の人見知りで臆病な娘がいる。
この娘が家族の想像の斜め上を行く行動力を見せる。
この子は人の好意で生かされている。

うさぎの大冒険・第一の事件
保育園年少の時に発熱でお休みをしていた。嫁が一緒にいたが、娘が寝静まるのを待ちすぐ帰るつもりで車で買い物に出た。帰宅すると玄関の鍵が開いている。寝室へ走る。娘が居ない。顔面蒼白で探し始める。ママを探しに行ったに違いない。アンパンマンパジャマで髪はクシャクシャ、おでこに冷えぴた。この姿の三歳の女の子が平日の白昼に熱でフラフラと歩いている。小さなゾンビである。目立たないわけが無い。自宅から大型スーパーへ向かう途中(自宅より300m程)の床屋で保護された。保育園を経由して連絡が入り強制送還。床屋と保育園へ平身低頭でお礼とお詫び。

・第二の事件
保育園年長の時に発熱でお休みをしていた。
嫁が一緒にいたが「すぐ帰るからお買い物へ行っても良い?」「お留守番できるよ」と娘。あれから二年成長した。少々学習能力に欠けた嫁はすぐに帰るつもりで車で買い物に出た。帰宅すると玄関の鍵が開いている。寝室へ走る。娘が居ない。ほぼここまで第一の事件のコピー。前科者である。予想はつく。前回と違う大型スーパーへアンパンマンパジャマで髪の毛はクシャクシャおでこに冷えぴた。今回は娘の通う保育園前を通過している。私の母が常連の喫茶店前をフラフラ歩いている所を発見されて強制送還。喫茶店へ平身低頭でお礼とお詫び。お礼も兼ねてチケット購入。実に一宮らしい発見方法。前回同様にママの向かった先を正確に追跡、警察犬顔負けである。成長した暁にはこの能力を生かした仕事に就いて欲しい。

・第三の事件
今年、娘が夏休みに嫁の実家へひとりで泊りに行きたいと言い出した。ここには義父、義母がいる。一日の内、僅か一時間ほど勤務の都合上、誰も居なくなるが「ひとりでお留守番できる!」という娘を信じた。何より娘に土地勘が無い。それにマンションの四階。どこへも行けるはずが無い。彼女を甘く見過ぎていた。娘が一人になっていた家へ義母が帰宅したところ娘と一緒に知らない女子高校生がいる。独身男性ならかなり憧れるシチュエーションである。「お邪魔しました♡」と少女は笑顔で帰っていく。歳の離れたお友達かな?と義母は深く考えなかったらしい。さすが学習能力の足りない嫁の母。次の日もまた次の日もこの少女がいる。学習能力の足りない嫁の母でも疑問に思った。「この少女を知っているか?」と電話。嫁が実家へ走る、嫁もいくらかは学習していたらしく娘に真相を聞く。「さみしいから…」と全く知らない隣家を泣きながら訪ねた。そこにいた少女が面倒をみてくれた。しかも三日間毎日。隣家へ平身低頭でお礼とお詫び。いくらかは学習した嫁によって自宅へ強制送還。

三回共に近隣の優しい人たちによって娘は無事だった。一つ間違っていたらと思うと空恐ろしい。この世の中捨てたものではない。