東海科学機器協会の会報

No.354 2015 春号

自然災害に於ける気象観測装置の役割

三弘計測サービス㈱気象課 小川 高司

 私が所属している部署で扱う気象観測装置が、自然災害に対し何処で、どの様に役立っているかをこのサイエンスコーナーをお借りして簡単に紹介させて頂きます。

 毎年各地で様々な自然災害が発生し、ときに甚大な被害を新聞等で見聞きします。

 ここでは、私たちの身近で起こりうる自然災害の内「水害」をテーマに気象観測機器の役割をご紹介致します。

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海水等の蒸発(水蒸気が雲になる) ⇒ 雷雲の発生 ⇒ 雨の降り始め ⇒ ゲリラ豪雨 ⇒ ダム及び河川の水位変化 ⇒ 河川の氾濫(地下ヘの浸透、土砂崩れ、道路、民家への浸水)⇒海等への流出→

 この水害のフローに基づき気象観測機器の役割を説明いたします。

●海水等の蒸発
海水等が水蒸気で雲になり、諸条件が重なり雨雲となります。気象庁ではその雨雲にドップラーレーダーを当てて今後どのように雲が発達し災害を引き起こすかを予測しています。更に気圧計で気圧の変化、風向風速計で風の変化等のデータを注意深く見守って監視しています。

14_02ドップラーレーダー
雲内部の降水粒子の移動速度と粒子の数を観測することで雲内部の風の挙動と今後の雨の量を知ることができる装置。

●雲が雷雲になりました
雷検知装置がゴルフ場など屋外に多くの集まる場所でサイレン、放送等で警戒信号を出し避難を呼びかけます。

雷検知器
大気中で生じる放電(稲妻)は光(雷光)と音(雷鳴)を放出しこれを検出して雷雲の接近を観測する装置。

●雨が降り始める
感雨計が雨の降り始めを感知し情報として伝え、地下など屋内に居る人に知らせます。降雨強度計が今後この雨がどれ位の雨の量となるかを予測します。そのデータに基づきダムの放流、水門の開閉準備をして水害に備えます。

14_03感雨器
上部に設置した電極で水滴を捕えると抵抗値が変化します。その抵抗変化をコンバーターでとらえ降雨状態を監視する機器。

●ゲリラ豪雨(雨が降り続いています)
転倒ます雨量計が雨量を連続観測し、1時間、1日等区間雨量を監視しています。雨量計警報装置が、ゲリラ豪雨など短時間で多く雨が降り、あらかじめ設定してある基準値を超えた場合にその情報をテレメーター装置で伝え、更に電話応答装置にて指定連絡先に現在の状況が即座に伝わり水害の対策に役立てます。

降雨強度計
雨1水滴(降水量にして約0.0083mm)から観測が出来ます。1分間の観測で10分、1時間後の雨量が予測可能な観測機器。

15_011雨量計
直径20㎜の円筒型で内部にシーソー動作を繰り返す転倒ますがセットされ、その動作を雨量信号に変え出力しています。一般的に1転倒当たり0.5㎜、1㎜計の機器が一般的です。

●ダム及び河川の水位変化(河川、ダムの水位が上昇し始めました)
水位観測装置で常時水位を観測しています。変化した水位情報を観測局よりテレメーター装置で、観測データ、警戒水位等の色々な情報を関係各所に伝達し、同じく電話応答装置にて指定連絡先にその水位情報が届き今後の対策の準備をします。

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水位計・浸水計
水圧式(水中に設置し水圧を観測)、フロート式水位計(浮きを使用して表面で水位観測)、超音波式(音波にて非接触観測)等観測局舎を設けています。浸水計も同じ原理のセンサーが使用されています。

●河川の氾濫(地下への浸透・民家への浸水・道路・土砂崩れ)
地下への浸透が限界を超え更に河川の氾濫が起きました。浸水検知器が低地(地下通路・民家)へ流れ込んだ水をいち早く検知しサイレン・パトライトにて住民に知らせ、避難等の処置を行います。道路にも浸水被害が出ます。雨量計の警報にて通行止情報を出し災害を防ぐと共に地すべり計を道路側面に設置し、土砂崩れの兆候を感知したら道路管理者に情報として伝え、いち早く通行止め等の処置を実施し事故防止に役立っています。

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15_042地すべり計
斜面にピアノ線を張り、少しでも土砂が変化(崖崩れ)した場合その変化がピアノ線の伸縮変化となり土砂崩れの事前信号を出す装置。

●海等への流出
雨が降り終わりました。
しばらくすると浸水も引き、河川の水位は平常に戻り、水流は海へ戻ります。
それが再度水蒸気となり一連のサイクルで回り、時には災害をもたらします。

 気象観測装置は皆様の身近な所に設置され、24時間観測をし続け情報をいち早くみなさまに伝達し水害等を未然に防ぐ為の役割を果たしています。

 これからも災害0をめざす気象観測装置をバックアップしてまいります。