東海科学機器協会の会報

No.361 2017 新年号

平成28年度TKK技術見学会報告 とよたecofultown(エコフルタウン)

見学会実行委員長 島津 達

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 11月17日に会員企業様から総勢20名の参加者を得て、豊田市にある「とよたecofultown」を見学しました。「とよたecofultown」は環境先進都市である豊田市が運営する、水素ステーション、スマートハウス、パビリオン、公園、高度道路交通システム、地産地消ハウス(レストラン)で構成される未来型の人と技術が融合する「ハイブリッド・シティ豊田市」のモデルタウンです。同施設は、都市部エリア、中山間地エリア、山間地エリアの3つのエリアにわかれており、実際の豊田市をコンパクトに縮小した形で構成されています。

最初に私たちを迎えてくれたのは、ITS(Intelligent Transport System)と呼ばれる高度道路交通システムです。バス車両進入管理システムは、バスが近づくと自動で車止めが下がり、LEDライトが車道や停車位置を示してくれました。

水素ステーションは(株)東邦ガス、(株)岩谷産業が実際に営業している、燃料電池自動車(FCV)のための水素充填施設であり、見学用のビデオ鑑賞室と実際の水素充填施設で構成されています。幸運にもちょうど見学途中に実際にお客様が「MIRAI」でガス充填に来られ、実際の充填過程も見学できました。また今回は普通見ることができない、バックヤードも見学させて頂き、たくさんのSUSパイプで構成されたその複雑な配管設備に驚かされました。この水素ステーションは安全対策も万全で各種水素センサー、自動消火装置等が設けられていました。

 パビリオンでは豊田市の環境への取り組みを紹介するエコナビゲーションを鑑賞したのち、「バイオミメティクス(生物模倣)※注」を用いた技術を紹介した発見の森で、蜘蛛の糸を束ねて作った素材(バンバー等に使用)、蓮の葉の表面構造を真似た水をはじく素材、蛾の目の原理を応用した反射防止膜、カタツムリの殻にヒントを得た汚れにくいタイル(実際に自動車の塗装にも使われ始めている)、蜂の巣を真似た安定した構造体であるハニカム構造等の説明を受け、もう既にこういった技術が身近に応用されていることに驚きを感じると共に、ビジネス的にも非常に興味深い内容でした。触れる地球では、デジタル地球儀で、地球温暖化や台風・津波の発生過程、渡り鳥の移動など、地球のダイナミズムを生きたかたちで体感できました。

 スマートハウスは太陽光発電、蓄電池等を備え、HEMS(Home Energy Management System)で、家庭でのエネルギーの「見える化」と一元管理を実現でき、部屋の各所にもエコの工夫がされていました。

9_1 最後に抽選で選抜された方5名がトヨタ自動車の立ち乗り型乗り物「Winglet(ウィングレット)」(セグウェイのようなものですが、もっとコンパクト)に試乗。基本的には体重移動で動き、人と並んで走ることを目的にしていますので、最大6km/hしかスピードは出ません。試乗に選ばれた方は、初めはおぼつかない様子でしたが、皆さん適応力が高く、最後は軽快に乗りこなされていました。

 見学終了後は、併設されております地産地消ハウス(レストラン)で休憩を取り、名古屋への帰途となりました。

 今回の見学では、東海地域の産業の中心地とも言えるトヨタ自動車を核とする豊田市がとても環境に配慮し、「人」と「車」と「環境」が科学技術で調和を保つことにより、これが「ミライのフツー」になること目指しているこを再認識しました。またその一助を担っている私たちTKKの会員に課せられたミッションも、科学技術で社会と未来へ貢献することであると、決意を新たにした次第です。