東海科学機器協会の会報

No.376 2020 秋号

サイエンスコーナー COVID-19に対する取り組み 

事態の終息に向けて闘う人々を支援します!
株式会社島津製作所 名古屋支店 藤岡 秀治

新型コロナウイルスの感染拡大は、地域社会や経済活動に前例のない被害をもたらし、人々の
健康や生活に深刻な影響を与えています。現在、医療現場では、多くの医療従事者や研究者が検
査や治療に尽力し、ワクチン、治療薬の開発を急いでいます。そうした最前線に立つ方々の支援や
事態の終息に貢献するため、当社は全力を注いでいます。ここでは、新型コロナウイルスの検出や
肺炎の診断に貢献する当社の製品、治療薬の開発を支援するソリューションなどを紹介させてい
ただきます。
 島津製作所は、科学技術の力を信じて、新型コロナウイルスと闘う皆様を支援します。
※以下は当社HP掲載記事の抜粋です。詳細につきましてはこちらをご覧ください。
 https://www.shimadzu.co.jp/covid-19/
新型コロナウイルス検出試薬キット
 検査の省力化や検出時間の短縮、検査コストの低減を目的に開発し、4月20日に発売しました。
このキットは、当社独自の遺伝子増幅技術「Ampdirect?技術」をベースに、国立感染症研
究所のマニュアルに沿って開発しました。本キットの使用によって、PCR検査におけるRNAの抽
出・精製工程を省くことができます。検査に要する人手の削減や人為的ミスの防止に繋がり、2時間
以上かかっていたPCR検査の全工程を約1時間に短縮できます。
 また、唾液によるPCR検査が可能なことを確認しています。(5月26日 プレスリリース)
肺炎診断 回診用X線撮影装置
 X線検査室への移動が制限される感染症患者の肺炎診断にご利用いただくため、デジタル式
回診用X線撮影装置の増産に取り組んでいます。本製品は、ベッドサイドやICU(集中治療室)
で利用可能な移動型のX線撮影装置です。COVID-19のような感染症が発生した場合、院
内共用の検査室に設置された画像診断装置の使用や消毒は難しく、感染症患者専用の回診用
装置が必要とされています。当社は、グループをあげて装置の生産に取り組み、ひっ迫する医療現
場への提供を進めています。本装置は、患者の診断や容体の把握、人工呼吸器の必要性を判断する際などに有用であると考えられてます。

新型コロナウイルス感染症治療薬候補の研究・
開発支援
 当社の仏グループ会社であるAlsachim SASは、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補である6種の既存薬向けに安定同位体試薬を開発しました。安定同位体試薬は、医薬品候補化合物の効果や副作用、血中の薬物濃度の関係を調べる際
などに用いられます。新型コロナウイルス感染症治療薬の開発は人類にとって急務です。世界の製薬
企業は、開発済みの薬の転用によって開発期間の短縮を目指しています。本安定同位体試薬や液体
クロマトグラフ質量分析計をはじめとする当社の分析装置によって、治療薬の開発に尽力する製薬企
業や研究機関を支援しています。感染リスク低減 感染症 無人問診システム
 グループ会社である島津エス・ディー株式会社は、医療機関での感染リスクを低減するため、新型コロナウイルス感染症の疑いがある患者に無人で問診が行えるシステムを開発しました。医療機関の入口や受付に設置することで、医療スタッ
フが問診のために患者と接触する機会を抑えるとともに、感染症の疑いのある患者を他の患者と
振り分けることができ、院内での感染症拡大防止に寄与します。また感染症以外の目的で受診を必
要とする患者の不安低減にもつながります。病院機能を正常に保つうえで、院内での感染症の拡
大防止は、非常に重要な課題となっています。本製品は人と人との接触を抑えることで、院内での
感染リスクを低減します。