東海科学機器協会の会報

No.315 2007 春号

[ 会員だより ] 絵のテーマ 日本の原風景と町並みを求めて

(株)三弘 管理部 西山 隆久


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若いときからやってみたかった絵を描くことを、義姉に絵画教室へ誘われたのがきっかけで50歳すぎて始めることになってもう数年になります。当初は大好きな円空仏や羅漢石仏をモチーフに羽島市、旧美並村、川越市の喜多院等スケッチに出かけて絵画教室仲間の作品展に出してはひとり納得をしていました。其のおかげ?で仲間内では「仏像の西山さん」のイメージが定着してしまいましたが、本来自分が描きたいものは何か他にもあるような気がしていました。

3年ほど前に福井県の勝山市へ行くことがあって、数百年前の白山信仰の基地の寺、今は苔むした境内と宿坊への石畳道や建物の礎石しか残っていませんが平泉寺(へいせんじ)を散策しての帰路、いわゆる観光コースからはずれた集落の風景に感動をおぼえてすぐスケッチしたのがこの写真の絵です。どこにでもあるような里山の風景ですが、なにか懐かしくまた気持ちを温かくさせるような日本の原風景がありました。昨年も行く機会があって同じ集落への道を散策しましたが、道のいたるところにクマ出没注意の看板が立ててあって早々に退散しました。聞くところによると昨年は何回か集落のすぐ近くに出没したとのことでした。きっとクマの世界では食糧難でしょうか。

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一方、もうひとつの絵のモチーフとして町並みのスケッチをすることがあります。主に地方の小さな町をターゲットにして、坂道の多い町、整備されていない古い家屋がある町、整備されていないごちゃまぜの街、城址のある町等なかなか注文が多いのですが、最近は古い家並みのある町でも地域おこしと言う事で整備されてきれいになっていますし、なにか作為的で観光的なにおいがして余り面白くないのですが、これも仕方の無いことかもしれませんね。この写真の絵は尾道市の観光コースから少しはずれたところです(はずれたところが好きみたいです)が、崩れた土塀と下り坂とその向こうに町と海が見えるところで描いた1枚です(海の向側の山はデフォルメしました)。下り坂を描くのは少し難しいですが個人的にはこのアングルが好きで、手前味噌になりますが仲間内でこの絵のファンが多くいるのも事実です。
50の手習いで始めた透明水彩です。現在は日本水彩画会名古屋支部の一般会員になって、ときたま作品展に出品してはいますが目的は入選することや賞をとることではなくて、忙しい仕事や生活のなかで誰にも邪魔されない自分だけの時間と空間、絵を描く時間を持つということが貴重で至福の時と思っています。