〔サイエンスリレー第6回〕 超純水の役割について
【リレーでつなぐ×サイエンスコーナー】
各会員様は、それぞれ科学機器業界の一翼を担う、すばらしい商品をもっておられます。
そこから科学技術の側面を切り出し、情報提供するということで会員同士のコミニケーションも高めていきたい。
そこでお馴染みのサイエンスコーナーをリレー方式でつないで行きます!
サイエンスリレー第6回
超純水の役割について
アドバンテック東洋㈱ 相多正雄
1.はじめに
日常生活で使用する水(上水)は、透明度が高くきれいな水というイメージがありますが、実際にはカルシウムや塩素などのイオンが存在し、炭酸ガスや微粒子などいろいろなものが含まれているため、化学的には純粋な水ではありません。
超純水に明確な定義はありませんが、一般的には、純水を供給水として精製し、比抵抗18MΩ・cm(25℃)以上の水を指し、全有機体炭素(TOC)や微粒子なども重視されます。
私たちの生活には、超純水は関係ないと思われるかもしれませんが、実際には超純水がないと現代の生活は成り立ちません。
例えば、携帯電話、パソコン、医薬品など、私たちが毎日身近に接している製品の製造工程に、超純水は必要不可欠なのです。
2.超純水の主な用途
①電子産業分野(半導体製造)
ウェハーやガラス基板表面に残る薬品や微粒子などを除去する洗浄水に、超純水を使用します。洗浄水に不純物があると、ウェハー上のLSI配線に影響を及ぼし、性能低下や不良品発生の原因となるためです。
②医薬、医療分野
医薬品の研究開発、製造や調合に使用されます。体内に直接入る注射用水は、無菌であることが必須ですが、発熱性物質(パイロジェン)も排除する必要性があり、日本薬局方(JP)や医薬品の製造および品質管理に関する基準(GMP)によって、厳しく管理されています。
③高精度微量分析
微量分析に超純水を使用するのは、測定したい物質濃度が低く、ブランク水も不純物が極限まで取り除かれた超純水を使用しないと、目的の物質濃度が正確に測定できないためです。
3.超純水の精製
超純水の精製には、活性炭、イオン交換樹脂、UVランプ、UF膜を利用して精製し、常に循環することで水質を維持しています。
4.おわりに
ラボ用からプロセス水用まで、使用容量により様々な装置が存在し、研究室や製造工場、医療施設など、あらゆるところで超純水は使用されています。
現代の生活を支える技術の発展には、欠かすことのできない重要な役割を超純水は担っているのです。