東海科学機器協会の会報

No.343 2012 冬号

TKK見学会報告

TKK見学会実行委員会 委員長 八代 智


TKK見学会

 平成24年11月7日(水)に、今年度の東海科学機器協会見学会を実施しました。今回は、「トヨタテクノミュージアム産業技術記念館」と「あいち産業科学技術総合センター・知の拠点」を訪問しました。会員企業20社から25名様に参加をしていただきました。
以下、報告をします。

「トヨタテクノミュージアム産業技術記念館」について
 産業技術記念館(以下、記念館と記載)は、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏の誕生日に合わせて1994年6月にトヨタグループの共同事業としてグループ発祥の地である旧豊田紡織株式会社本社工場跡(名古屋市)に設立されました。ここは、豊田喜一郎氏の父である豊田佐吉氏が、自動織機の研究開発のために創設した試験工場でもあり、記念館はそれらの建築物を利用しています。産業遺産を保存し公開することで、近代日本の発展を支えた基幹産業の一つである紡織・繊維機械と、現代を開拓し続ける自動車技術の変遷を通じて、日本の産業技術史について次代を担う人たちへ系統的に紹介しています。

トヨタテクノミュージアム産業技術記念館 豊田佐吉氏は、国の発展に貢献する事業を起こすとの志で、興味を抱いた織機の改良に努力し、当時世界最高の生産能力を誇る「無停止杼換式豊田自動織機(むていしひかんしき・・・)(型名:G型自動織機)」を発明しました。一人の作業者が1台の織機しか操作できなかった時代から、一人の作業者で30台〜50台の自動織機が扱える時代を切り拓いた画期的な製品でした。豊田喜一郎氏は、大ヒットしたG型自動織機の生産性を上げるために製造工程を減らすなど工夫した生産ラインで月産1000台を達成しました。また、従業員の熟練訓練にも注力しました。将来に渡り豊田の基幹事業としての自動織機事業に陰りがあったこと、欧米では自動車産業が隆盛していたこと、国内では関東大震災復興で自動車需要が急増していたこと、それらに自動織機製造技術で培った生産技術と金属加工技術が融合して、トヨタ自動車が誕生しました。豊田二代に渡るモノづくりの熱意とチャレンジ精神が伝わってくる、約2時間を要した濃厚な見学でした。

「あいち産業科学技術総合センター・知の拠点」について
産・学・行政(愛知県)が連携して、ナノテクノロジーを核として、付加価値の高い製品・素材につながる技術の創造支援のために、豊田市に設立された施設です。高度計測分析施設を備えたあいち産業科学技術総合センター(以下、センターと記載)は平成24年2月に開所し、併設されたシンクロトロン光利用施設は平成25年早々に使用可能となる予定です。センターでは、電子顕微鏡、電子プローブマイクロ分析装置など高度計測分析装置が、十数種類設置されています。これらの機器を使用して、企業などからの依頼測定に有料で対応します。

あいち産業科学技術総合センター・知の拠点 また、愛知県内の大学が中心となって、産学行政で重点プロジェクト(新素材加工技術開発、食の安全安心技術開発、超早期診断技術開発)が実施されています。これらのプロジェクトは、研究開発が進行するにつれ機密性を増すため、見学することがはできませんでした。残念ではありますが、研究開発が着実に進んでいることを意味しており、施設の目的を果たしつつあることは、機器を納入したメーカーの一つとしてうれしい思いです。
 また、ナノテク研究に不可欠であるシンクロトロン光利用施設は、輸送機、電機、化粧品など幅広い業界の高機能・高品質のモノづくりを支える施設です。シンクロトロン光利用施設は、すでに国内の他地域にありますが、知の拠点のそれは、産業利用を主目的に置いていることが特徴です。そのため企業からの利用相談に応じるコーディネイター要員を充実させています。また、成果の機密保持にも配慮しています。現在、中部地区は、全国トップクラスのモノづくり地区ですが、将来に渡り世界有数のモノづくり地区であり続けたいとの愛知県の強い意思を感じました。
 最後に、見学会実施にあたりご参加いただいた会員各位、また、多大なご協力・支援をいただスタッフ各位へお礼を申し上げます。