東海科学機器協会の会報

No.355 2015 夏号

記念講演レポート 6月10日(水)13:20〜14:20

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炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
複合材料の諸産業分野への応用の展望と、名大ナショナルコンポジットセンターの取り組みについて

講師 名古屋大学特任教授
ナショナルコンポジットセンター総長補佐

石川隆司 氏


最新科学機器展副実行委員長 島津 達

 第23回最新科学機器展、初日6月10日の記念講演として名古屋大学ナショナルコンポジットセンター特任教授/総長補佐 石川隆司氏を講師としてお招きし、「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)複合材料の諸産業分野への応用の展望と、名大ナショナルコンポジットセンターの取り組みについて」という演題でご講演頂きました。会場は初日にもかかわらず、聴講者が約150名とほぼ満席でした。

 最初に、軽くて強くて錆びないCFRPの特長やその製造方法と繊維形状の違いによる製品例を解かり易くご説明頂き、続いてCFRPの航空機への応用〜航空機構造重量に占める複合材料比率の変遷(ボーイングB787、エアバスA350におけるCFRPの適用例)とエンジンファン周辺構造のCFRP化について、CRFPの自動車への応用〜CFRPを自動車に適用し軽量化により排出ガス(CO2等)を削減することで、環境低負荷型社会を実現しようとするグローバル排ガス燃費規制動向について(自動車を100kg軽量化することができれば自動車走行距離1kmあたり約20gのCO2が削減できます)、各国における排ガス規制動向と各自動車メーカーのCFRP採用を含む軽量化対応状況等を解説頂き(今回トヨタ自動車様から特別展示頂いた燃料電池車MIRAIの高圧水素タンク、電池受けパッド等にもCFRPが適用されています)、あわせて日本における自動車用途CFRP活用の実現を目指し、名古屋大学ナショナルコンポジットセンターを研究拠点としたNEDOプロジェクト「熱可塑性(熱をかけたり冷やしたりして型を自由に成型できる性質を持った)CFRPの開発」の現状についてもお話し頂きました。

 最後に日本のものづくりの中心地である東海地区と北陸地区の大学、公設試験場、企業等が連携して研究開発から生産までのCFRPの世界的な一大拠点を形成し、実用化を加速させる「東海・北陸コンポジットハイウエイ構想」についてもお話し頂き、全体として石川先生のCFRPにかける長年の熱意が終始聴衆に伝播した内容のご講演で、「炭素繊維とその複合材料(CFRP)は人類の宝」という先生の結びの言葉が印象に残った1時間でした。

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