東海科学機器協会の会報

No.355 2015 夏号

記念講演レポート 6月11日(木) 13:20〜14:20

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計測データはモノづくり現場の共通言語

講師 (一社)愛知県計量連合会副会長
トヨタ自動車㈱ 計測技術部次長

大竹英世 氏


東海科学機器協会理事 伊藤弘一郎

展示会2日目の記念講演は、トヨタ自動車㈱計測技術部次長 大竹英世氏をお迎えし「計測データはモノづくり現場の共通言語」というテーマでご講演頂きました。 お話頂いた内容は、トヨタ自動車の会社概要から始まり、自動車の開発試験に計測機器がどのように使用されているか、そして開発・製造における計測技術部の取り組みについてでした。さらに講演終盤では計測・計量に携わる人はどう意識を変え、働き方を変えるかという点についてお話し頂きました。
(講演要旨)

近年の自動車は、移動距離や車両サイズの多様化により、使用エネルギーも電気のみで走行するEV領域、電気とガソリンで走行するHV・PHV領域、水素エネルギーで走行するFCV領域へと進化している。それに伴いモノづくりの現場でも多種多様な計測機器を用い、設計・生産技術・製造分野において定量値による科学的アプローチが必要になってきている。

トヨタ自動車では「もっといいクルマをつくろうよ」をテーマに、もっと燃費のよいクルマ、早く走るクルマ、室内の広いクルマ、静かなクルマ等を「いいクルマ」と位置づけている。そこでキーとなるのが計測である。「はかれる」ものであれば、つくれるが、「はかれない」ものであれば、つくれない。そのため計測技術部としての役割は、はかれないものをはかれるようにする、評価する武器をグローバルへ展開する、正しくはかり続けるために「勝てる武器と知見の提供すること」をミッションとしている。現在、生産技術革新に向けた取り組みとして計測技術を活用したモノづくり改革をすすめ、見える化技術の提供、インライン・インプロセス計測に向けて先端計測技術の開発、運用ルール規格化に取り組んでいる。

しかし、一番重要なことは、人材である。豊田英二最高顧問のお言葉でもある「人間がモノをつくるのだから、人をつくらねば、仕事も始まらない」ことを念頭に置き、計測器を使うのも計測から得られるデータを活用するのも、最後は人であるので計測・計量に携わる人への期待として、「計測専門家=モノづくりの専門家」として意識し、活躍の場を工程の下流から上流へ・標準化された業務から標準化する業務へ・指摘型から提案型へと働き方を変えていく必要がある。そのため部員には「無くせないか、変えられないか、減らせないか」というテーマを与え、日々考えさせてフォローし、人材育成に重きを置いて努めている。

最後に、“まず計測ありき・・・すべては計測(測ること)からはじまる。確実に構造改革を実践して、業務革新を「図り」、モノを正しく「測らなければ」最後は自分が「謀られること」になる。”この言葉をご披露いただき、講演は終わった。

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