東海科学機器協会の会報

No.312 2006 秋号

[ 他魚の部 ] 痛みに耐えながらの喜び

(資)昭和理化 大山 鎬俊


04_018 珍しく休日に早起きして豊浜へ。受付を済ませてエサと若干の釣具を調達し、逸る気持ちを抑えつつ前日に調べておいた豊浜新堤へ向かう。家族連れや黒鯛を狙う釣り人で既に釣り場は超満員。周りの人の仕掛けをさりげなくチェックしてみると、殆どが撒き餌のカゴにサビキ仕掛け。それに対してこちらが用意した仕掛けは投げ竿に天びん仕掛け。勿論、ハゼ釣り大会なので間違ってはいない筈だが、大会での入賞よりも「釣果」を重視する私はこの状況に一抹の不安を覚えてしまう。

 9月に入ったとは言っても焼け付くような太陽の日差しの中、仕掛けを投げる。ゆっくりリールを回しているとすぐにアタリ。強い引きと重さに興奮しながら、慎重に仕掛けを上げてみると釣れたのは10センチ位の小さなメゴチ。その後もメダカのようなハゼやメゴチがポツポツと釣れてくる。こうなると人間の欲なのか、それとも単にボウズを免れて余裕が出てきただけなのか、入賞できる程の大きなハゼは釣れないものか、という気持ちが湧いてくる。

 ビールを飲みながら何度も仕掛けを投げる。暑さにちょっとうんざりしてきた時、突然リールを巻く手が重くなった。散々、強い引きと手ごたえにだまされたような気分だったのであまり期待もせずに巻き上げてみると、手のひらよりちょっと大きなカレイとハゼの一荷釣り。大した大きさじゃないけれど、これで「他魚の部」で3位ぐらいには入れるかな。

 物事には何でもオチがあるもので、最後に釣れたのは小さなオコゼのような魚。触らずにこのまま針を切ってしまおうと慎重に扱ったつもりでも、ドジな私は案の定、指先を刺されてしまう。腕の痛みと痺れに耐えながら計量。結果は88グラムで「他魚の部」1位。喜びと最後に起きたアクシデントによる痛みを同時に味わいながら家路についた。