東海科学機器協会の会報

No.328 2009 冬号

〔TOPICS〕三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所での研修を終えて


㈱島津製作所 八代 智


  三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場での研修を実施しました。以下、報告をします。
 三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所(以下、名航と称す)は、日本の航空宇宙産業の集積地である愛知県に、大江、飛島(とびしま)、小牧南・北工場を擁し、最新鋭の航空機及び宇宙機器等を製作しています。小牧南工場は、航空自衛隊の主力戦闘機F-15を始め、自衛隊の各種航空機とボーイングなどの民間航空機の製造と修理を担当する工場です。開発中の国産ジェット旅客機MRJもこの工場で製作されます。製造または修理が完了した航空機は、この工場の滑走路から納入先の飛行場へ飛び立って行きます。
 名航は、1884年(明治17年)に創立され、終戦までに零式艦上戦闘機他航空機18,000機、同エンジン52,000基を製作しました。戦後の1952年(昭和27年)に小牧南工場が建設され、F-86、F-104などの自衛隊主力航空機製作に着手する一方で、1962年(昭和37年)には、戦後初の国産旅客機YS-11の試作機初飛行に成功しました。その後も国内で唯一、航空自衛隊主力航空機の製作などを続けています。
 この工場には、史料館が併設されています。
同館には、終戦前まで主力戦闘機として製作された零式艦上戦闘機と国産初のロケット戦闘機「秋水(しゅうすい)」の実物が展示されていました。秋水は、日本々土に飛来する米軍のB-29戦略爆撃機を迎撃するために、数分で高々度に達する目的で開発された機体です。当初は、当時の同盟国ドイツから製作図面を入手する予定でしたが、搬送中の潜水艦が撃沈され、図面は日本に届きませんでした。
 日本の技術者たちは、粒子の粗い外観写真と燃料成分を記載した文書を読み解き、独自の創意を加味して、試作指示から約1年間で試作機を初飛行させました。搭載したロケットエンジンの基本構造は、現在の技術からみても遜色無いものでした。
 航空機開発・製造には、膨大な時間と費用を要しますが、何よりも開発・製造に関わる人々の情熱と創意工夫が並外れて必要です。日本の航空産業は、終戦後、数々の制約を受けたため、欧米メーカーに比べて厳しい立場にありますが、世界に「日の丸の翼」を再び雄飛させるため、MRJビジネスの成功を祈念します。