東海科学機器協会の会報

No.322 2008 秋号

[ サイエンスコーナー ] 地球温暖化とCO2

壽化工機(株)
佐野教信


 地球温暖化対策としてのCO2の排出量削減は待ったなしの状況だと言われています。

このような中でCO2主因説に真っ向から対立する意見が「環境新聞」の3月5日、12日、19日に連載されていたので以下に紹介します。

「地球温暖化を見つめ直す」という題で、筆者は東京工業大学の地球惑星専攻教授丸山茂樹氏です。

 1940~1980年にかけて人間は多量のCO2を排出していたが、この期間は長期的に寒冷化の傾向にあったとした上で、丸山氏はまず、デンマーク国立宇宙センターのスベンスマルク博士の説を紹介しています。

 博士の説によれば、太陽の黒点数と地球に降りそそぐ宇宙線の間には強い相関関係が見られ、宇宙線量の変化と地球の温度変化もよく一致しているということです。

このことは先に述べた寒冷化現象ともよく対応しているといいます。

 さらに宇宙線量の変化が雲量に影響するとされ、このことも低層雲についてよく一致しているようです。宇宙線は雲の核となっており、宇宙線が減少すると雲も少なくなり温暖化が進み、雲量が1%減るだけで気温が1℃上昇するというからCO2の増減による影響とは比べものにならないというわけです。  

 これに加えて丸山氏は「地球磁場の変化」の影響を考えています。地球磁場は宇宙線をはね返す役割を持っており、この磁場がどんどん弱まっているということです。磁場が減少すると宇宙線の入射が多くなり、そのぶん雲量が増えて寒冷化することになります。さらに地球の公転周期や地軸の傾きの変化が気候に影響するというミコランビッチサイクル説では、約2000年後に本当の氷河期に突入するといわれており、丸山氏も2005年から寒冷化が始まっていると考えています。

 このように丸山氏はIPCC(気候変動に

関する政府間パネル)とは異なる意見を持っているのですが、かといってIPCCを否定しているわけではなく、2つの点で高く評価をしています。ひとつは科学と政治を近づけたこと、もうひとつは省エネ社会への道をつけたことだと言います。

 2000年問題の元凶は人口問題と食糧危機であるとしたうえで、その主たる原因は化石燃料の消費と枯渇であり、結局は、化石燃料を節約しながら長く使い続けるしかないということです。日本でいえば、適正な人口は4000万人程(明治中期の人口)と推定され、省エネ技術などに投資し、少子高齢化で人口減少に対応できる国を率先して作らねばならないということです。このことが、日本が歴史上意味のある国家として評価されるポイントであるとしています。 

 この夏の暑さを思いおこすと、寒冷化についてはやや疑問に感じなくもありませんが、最近の原油高騰やわが国の食料自給率の低下、発展途上国における人口問題等を考え合わせると説得力のある結論でした。