東海科学機器協会の会報

No.358 2016 春号

サイエンスコーナー

2015年4月1日から改正フロン法が施行されました

エスペック㈱ CS本部 サービス推進部 
サービス企画グループリーダー 細見昭浩

 この改正で「フロン回収・破壊法」は、「フロン排出抑制法」へと通称が改められ、規制強化が進められております。

 冷凍空調機器等の冷媒として以前は、クロロフルオロカーボン(以下、CFC)ハイドロクロロフルオロカーボン(以下、HCFC)などのフロン類を使用していましたが、オゾン層を破壊する物質であることから、国際的な取り決め「モントリオール議定書」(1987年採択)で規制されるようになりました。

 しかし、地球温暖化が深刻な問題として注目されるようになると、CFC、HCFCの代わりとして開発されたハイドロフルオロカーボン(以下、HFC)も規制が必要になってきました。HFCは温暖化への影響が非常に大きいのですが、オゾン層には影響を及ぼさないので、モントリオール議定書の規制対象外でしたが、先進国の温室効果ガス排出を初めて規制した京都議定書(1997年採択)で削減対象となりました。

 日本では、2001年に成立したフロン回収・破壊法でHFCを含むフロン類の回収を義務付け、正当な理由なく大気中に放出させた場合の罰則規定も設けてきましたが、経済産業省オゾン層保護等推進室による調査では、機器廃棄時のHFCなどの冷媒回収率は目標の6割を大きく下回り、わずか3割程度であったこと、廃棄時だけでなく使用中の漏えい量も当初の想定より多いことが判明しました。

 こうした背景を受け、これまでの第一種特定製品からのフロン回収・破壊にとどまらず、フロン類のライフサイクル全般にわたる対策が必要となってきたことから、「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(通称:フロン回収・破壊法)」が改正され、法律の名称も「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(通称:フロン排出抑制法)」 に改められました。

 新たに義務が追加された内容は、下記の通りです。
①フロン類の実質的フェーズダウン      (ガスメーカーによる取組)
②フロン類使用製品のノンフロン・低GWP化  促進(機器・製品メーカーによる転換)
③機器使用時におけるフロン類の漏えい防止  (機器ユーザーによる冷媒管理)
④充填・回収行為の適正化         (充填回収業者による適切な充填)
⑤再生行為の適正化、証明書による再生・破壊 完了の確認 
 (破壊業者、再生業者による適切な処理)

 今回のフロン排出抑制法により、第一種特定製品(業務用冷凍空調機器等)の管理者(所有者)には、管理意識を高め機器使用中にフロンが漏れ出ることを防ぐため、守るべき『管理者の判断の基準』が定められました。また、漏れ出たフロン量の算出と、年度ごとに漏れ出たフロン量が一定量以上となった場合には、国に報告しなければなりません。

 フロン排出抑制法の目的は、オゾン層の保護及び地球温暖化の防止に積極的に取り組むことであり、フロン類の大気中への排出を抑制するために、フロン類の「使用の合理化」および、特定製品に使用されるフロン類の「管理の適正化」を進めることです。
 私たちの生活環境を守り、未来へより良い環境社会を残すためには大変重要なことです。

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出典:環境省・経済産業省・国土交通省
「フロン排出抑制法パンフレット」より