東海科学機器協会の会報

No.365 2018 新年号

サングレイン知多蒸溜所

技術見学会実行委員長 島津 達

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11_111月16日(木)に会員企業様から総勢22名のご参加を得て、サングレイン㈱知多蒸留所を訪問しました。一昨年のサントリー㈱山崎蒸溜所に続く、ウイスキーの蒸溜所見学です。ここでは「ウイスキーに新しい風」、「風薫るハイボール」などのキャッチフレーズで脚光をあびているサントリーシングルグレーンウイスキー「知多」(2015年9月発売)を製造しています。山崎蒸溜所の立地とは違い、IHIや大型食品工場などが立ち並ぶ工場地帯の中にあり、さながら化学工場の様相です。これは、単式蒸溜器でモルトウイスキーをつくる山崎蒸溜所と違い、クリアな味になり、且つ、効率的に製造できる連続蒸溜機を採用していることから、化学工場に似た”ウイスキー製造工場”となっています。また、海に近いので主原料となるトウモロコシの運び受けに最適な立地であること、滋賀県近江にある貯蔵庫と山梨県の白州蒸溜所の中間点であることから1972年にここ知多に蒸溜所が作られたそうです。

 ところで皆さん、「グレーンウイスキー」をご存知でしょうか?大きく3つに分類されるウイスキーについて、まずはご説明します。 

○モルトウイスキー:大麦を主原料にしたウイスキーで、香り豊かで個性的。1つの蒸溜所で製造されたものをシングルモルトウイスキーと呼ぶ。 「山崎」「白州」はその代表格

○ブレンデッドウイスキー:モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたウイスキー。世界のウイスキーの8~9割を占める。「響」「角瓶」はその代表格

○グレーンウイスキー:トウモロコシなどの穀類を主原料にしたウイスキー。軽やかで穏やか。モルトウイスキーとブレンドすることで、モルトウイスキーの個性を引き出す重要な役割をする。ブレンデッドウイスキーの創造にはなくてはならない、縁の下の力持ち的な存在。

この縁の下の力持ちから自信を持って送り出されたのが、シングルグレーンウイスキー「知多」です。

11_2シングルとは「単一の蒸溜所でつくられた」という意味で、単一の原酒ではなく、「クリーン」、「ミディアム」、「ヘビー」につくり分けた原酒、更に樽(オーク樽やワイン樽等)を使い分けた原酒などからブレンドされています。つまり、世界でも稀なグレーンウイスキー原酒のつくり分けを行い、それら約10種類をブレンドして作られたウイスキーなのです。ピュアで爽やかな原酒「クリーン」、穀物の風味を感じ、口の中はピュアだがコクが増し深みを感じる原酒「ヘビー」、カーネルのような、また、いちごのような甘い香りでブレンドした時の後味に効いてくる原酒「ワイン樽」をテイスティングし、違いを実感しました。そして最後はそれらをブレンドした「知多」をテイスティング。ピュアで軽やかな味わいとほのかに甘い香りなど多彩な味わいや香りが引き出されています。ストレート、ロック、水割り、お湯割りなどいろいろな味わい方がありますが一番のお勧めはハイボールです。最後の試飲ではそのハイボールを賞味しましたが、おかわりをする人が続出でした。なお、山椒やすだちなど和素材をあわせると上品な和の香りがふわっと広がるそうです。ぜひ、皆さんもお試し下さい。

 和食に合うウイスキー「知多」、「日本人の味覚にあった洋酒文化を切り開きたい」との創業者の思いが、100年近くにも渡るサントリーの弛まぬ研鑽によって実現されたことを実感できた見学会でした。

 最後に、一般公開していないにもかかわらず見学を受け入れていただき、更に丁寧で軽快にご説明いただいた浅野部長様をはじめとするサングレイン㈱の皆様、見学会に多大なご支援をいただいたサントリービバレッジソリューション㈱礪波様には厚く御礼申し上げます。

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