東海科学機器協会の会報

No.368 2018 秋号

第24回最新科学機器展 基調講演

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 第24回最新科学機器展初日の基調講演として、中部経済産業局 局長 富吉賢一氏を講師にお迎えし、「中部経済の現状と展望」というテーマでご講演頂きました。講演内容は「今の経済の現状」「経済産業省の政策(中小企業対策)」「中小企業の支援」の3部構成でお話頂きました。会場は、初日にもかかわらず150名を超える聴講者で満席となりました。以下、講演内容をご紹介します。

 「今の経済の現状」というテーマでは、ものづくりの中心地である中部経済は日本経済とほぼ同じ流れであり、マクロ経済データから見ると、物価は上昇に転じており、デフレは脱却したと考えている。

 経済を決定する要因として消費・投資・輸出があるが、押し並べて良い方向に向かっている。東海3県は全国水準よりも高く、消費の伸びは低いが、設備投資が景気を引っ張っている。特に工作機械を中心とした設備投資が良好で、工作機械の総受注高も積み上がっていることから、投資の伸びはしばらく続くと考えられる。また、輸出も伸びており、どこの大陸も好景気で世界同時好況であるが、欧米の金利上昇の動きにより、世界経済の伸びが減速する恐れがあることが、今後の不安要因となっている。

 次の「経済産業省の政策」というテーマでは、中小企業対策として3つの政策があり、まずは、投資促進の税制として、固定資産税が減免される制度の導入や生産性向上の投資に対して税が減免される制度等を導入している。

 次に経済産業省が推進している政策としてConnectedIndustryがあり、ConnectedIndustryに資する税制をConnected Industrie’s税制というが、最低投資額が5千万円となっている。産業でのConnectedIndustryでは、IoT技術で工場や事業所だけではなく、材料から消費者まで全てのサプライチェーンが繋がることを意味し、同時にサイバーセキュリティの強化が求められ、セキュリティ対策が万全でない場合、サプライチェーンから外されるなど、安全に繋がるための投資が必要となってくる。

 消費を盛り上げるための賃上げ税制(所得拡大促進税制)では、賃上げ時の給与比較水準を平成24年度から前年度に変更するなど制度を簡素化した。

 「中小企業の支援」というテーマでは、事業承継税制の抜本拡充を行い、今後10年間を事業承継への集中投資期間とし、株式にかかる相続税を承継時に支払わなくてもよい制度にした。これは承継が続く限り猶予される。また、承継後に廃業する場合は廃業時の安い株価で納税すれば良く、事業を拡大させた後に第三者に売却する場合でも、承継時の株価もしくは売却時の株価いずれか安い方で納税すれば良いような仕組みにした。

 この20年間で中小企業の経営者の平均年齢は40代から60代後半と20歳高くなっているが、年齢が高くなるにつれて突然死のリスクも高くなり、結果、何の準備もないまま事業承継し、承継者が苦労しているケースも多くなっている。事業承継は60代で行われるのが良いといわれているが、事業承継をきっちり行うには10年かかるといわれてお
り、これは50代終わりぐらいから準備を始めた方がいいという事を意味している。

 中小企業支援センターにて、事業承継の準備開始から承継後の経営支援までの支援をフルパッケージで行っているので、事業承継時の税制拡充とあわせて上手く活用してほしい。

 最後に中小企業支援機関の紹介があり、メインバンク・税理士・商工会等をはじめ、国の機関では、中核にある中小企業基盤整備機構(旧中小企業事業団)の他に、中小企業の海外進出や
輸出の支援を行う日本貿易支援機構(JETRO)や、発展途上国でのマーケティングに強く資金の豊富な国際協力機構(JAICA)でも中小企業支援を行っている。

 都道府県や政令指定都市にある中小企業支援センターや公設試験研究機関では、細かな支援ができるので、それも上手く活用してほしい。その他公的金融機関として、日本政策金融公庫と商工中金があり、国の政策に沿った計画の認定を受けて融資を受ける場合にはメリットがある。

 このように色々な支援機関があるのでそれを上手く活用してください。という言葉で締めくくられて講演は終了しました。