東海科学機器協会の会報

No.369 2019 新年号

平成30年度TKK技術見学会報告

三菱ケミカル㈱四日市事業所と
四日市コンビナート夜景クルーズ

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見学会実行委員長 島津 達

 11月16日(木)に会員企業様から総勢28名のご参加を得て、三菱ケミカル㈱四日市事業所を訪問しました。日本初の石油化学コンビナートとして1952年操業、敷地面積200万㎡(東京ドーム45ケ分)、従業員はグループ会社を含めて約3,500名、国内最大手の総合化学メーカーであり、当協会の多くの会員企業様のお客様でもあります。最初にセミナールームで同事業所の歴史や概要を説明頂き、ドラマ仕立てのムービーでは我々聴講者の心をグッと引き付け、わかり易く身近に感じることができました。“時を越え、世代を超え、人と社会、そして地球が心地よい状態”を目指す「THEKAITEKICOMPANY」。この“KAITEKI”というオリジナルのコンセプトのもと、「機能商品」「素材」「ヘルスケア」の3つの事業分野を展開されています。

 その後、2班にわかれて見学を行いました。主な内容を以下に紹介します。

〇KAITEKI SQUARE Yokkaichi
 5つのゾーンから構成されておりKAITEKIを実現させるためのテーマを、Sustainability、Health、Comfortの観点から具体的な開発事例を挙げて紹介して頂きました。
エントランスゾーン:KAITEKIを表現するコンセプトカーがお出迎え。有機薄膜太陽電池、高断熱軽量内装材、有機EL照明、CFRPシャーシなど、「未来のくるま」につながる素材を搭載したコンセプトカーです。
テーマゾーン、コアテクノロジーゾーン、住環境ゾーン、Cafe & Libraryゾーン:自動車内装材は視覚的な質感だけでなく、軽く触れた際の触感(握る、触るなどのタッチ感)が近年重要な要素となっていること、色作り、きらきら感など着色技術にも注力していること、CFRPにはPAN系(しなって強度が高く航空機やスポーツ用品等の用途)とピッチ系(硬くて弾むことが少ないので振動しにくく航空宇宙やロボットアーム等の用途)の2種類があり両方を製造していること、ワイン用ペットボトルはガラスに匹敵する高いバリア性と質感持っていること、など身近に接しているものが数多くの最新技術よって実現されていることを実感。

〇カスタマーラボ
 お客様と共に評価を行いながら、自動車部品など新商品の早期事業化を目指ざすコラボレーションの場。歩行者保護試験機、多目的射出成形機、自動車が入る大型環境試験室を見学。単に素材を開発するだけでなく、実際に商品になった時の評価を素材メーカーが率先して実施されています。

〇塩浜地区場内バス見学
 紅白縞模様の煙突は何かご存知でしょうか?ひとつは、時々炎が上がる煙突に似たエレベーテッドフレアー。プラントの起動・停止時に放出されるガスを完全に燃やして処理する設備。
 もうひとつは高層煙突。大気汚染物質は除去しており、煙突から出ているのは燃焼時に発生した水蒸気。いずれもプラントの安全・安心な稼動の一環とのこと。広大な敷地と巨大な新旧プラントを間近に見ることができる貴重な体験でした。

 次に、四日市コンビナート夜景クルーズに向かいました。コンビナートを内側から見学した後、今度は海側から観る非日常体験をしようといった主旨です。元コンビナート企業OBのクルーズガイドのわかり易い説明を聞きながらの1時間貸切クルーズでしたが、夕刻のスタートだったこともあり、夕日を背景にした黒いコンビナートと照明が灯ったコンビナートの異なる夜景を堪能できたのは幸運でした。

 最後は、三重の食材が楽しめる「三重人 別邸」で懇親を深めた後、バスで名古屋駅に帰着。
四日市は、発展の過程で多大な公害問題が発生したことはご存知の通りです。それが、市民・事業者・行政等の努力で大きく改善されて良好な環境を取り戻していることを陸から海から実感でき、更に、私たちの”KAITEKI”の実現に向けて弛まぬ努力と果敢に事業を展開されている三菱ケミカル(株)様について理解を深めることができた、非常に有意義な技術見学会でした。