東海科学機器協会の会報

No.366 2018 春号

かきゃあ あんたも 変わりゆく時代、変わらない味

ハヤシ化成㈱ 総務部 福島 勝之

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 近頃、外食をしようと街を歩くたびに新しいお店に気づくことが多く、お店選びに迷う事もしばしば。そして新しいお店を発見すると同じくらいに、閉店していく店の多さにも驚かされます。そんなことを考えながらいると、ふと自分の父親を思い出すのです。父は豊明市で飲食店を営んでおり、1975年の創業から今年で43年を数えます。そのお店の名前は焼き肉レストラン「南海」です。

 創業当時の焼肉屋といえば、煙が充満する店内で現場仕事帰りの男性がワイワイと騒ぎながら、ビール片手にホルモンを食べるいわゆるホルモン屋が当たり前の時代。今でこそ人気の牛タンも当時はほとんどの人が目もくれないようなお肉で、煙の臭いを気にして無煙ロースターの焼き台が登場するのもまだ10年以上後になるくらい時代に焼き肉レストランを始めた私の父親。物心ついた頃から私も店を手伝いながら、子供ながらに焼き肉を通じて時代の移り変わりを感じたものです。

 そんな中にあって創業から父親が大切にしている看板メニュー「テールスープ」です。数日をかけて肉がホロホロになるまで煮込んだ牛のテールに芋茎や白菜などの数種類の野菜とオリジナルの味付けで仕上げる料理。お店に足を運んでくれるお客様に喜んでもらうため、お店の内装が新しくなっても、焼き台が無煙ロースターになっても変わらない「南海」自慢の一品です。

 仕事帰りに私が実家に顔を出すとき、自分が子供だった当時のお客さんの世代が変わり、孫を連れて変わらない料理を一緒に食べている姿を見ると、変わるべきは受け入れながらも変わらないこだわりを貫く父親の姿に、自分が年をとるほどにあらためて尊敬の念を強くするのです。

 これを読んでくださった方が近くへ立ち寄る機会があったとき、「テールスープ」はいかがでしょうか?個人店のお店ならではの“味”を楽しんでもらえたら、きっと父親も喜ぶと思います。