東海科学機器協会の会報

No.357 2016 新年号

会員だより 自動運転の未来に寄せる期待

㈱サンコウ電子研究所 田中 徹

 内閣府発表の「平成27年度版高齢社会白書」によると、我が国の総人口は平成26(西暦2014)年10月1日の時点で1億2,708万人であり、その内65歳以上の高齢者人口が過去最高の3,300万人(前年3,190万人)にもなるそうです。総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は凡そ26%と過去最高であり、日本は世界一の超高齢社会となっています。

 高齢化率の増大に伴い、高齢ドライバーによる自動車事故のニュースが耳目に触れる機会も増えました。特に、高速道路の逆走や、店舗への突入が多いように感じます。犠牲者が出る事も少なくはなく、中にはドライバーが孫を轢いて死なせてしまった痛ましい事故もありました。

 勿論、高齢者に限らず、全てのドライバーには事故の危険が必ず付きまといます。私も毎日のように車に乗りますので、改めて自戒するところはあります。それでも将来、自身が高齢者と呼ばれる年齢になり、認知能力や運動能力が衰えれば、事故に遭う可能性が格段に増す事は間違い有りません。果たして今現在と同じように運転する事が出来るのかと考えると、全く自信がなく空恐ろしくなります。

 しかし、私たちの社会は、深刻な事故を減らす未来を目指しています。自動車メーカー各社は様々な視点から事故防止機能を開発しており、高齢化社会の現状も捉えています。最近の車には衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)や、車線逸脱防止システム等が搭載されていますが、世界的にこうした装備の義務化を行う流れになっている模様です。

13 このように、世界で安全性の要求が高まっている今、世の関心を最も集めているのは“自動運転”ではないでしょうか。つい先日、ラリードライバーのアレックス・ロイ氏が、市販車であるテスラ「モデルS」の自動運転機能で、カリフォルニアからニューヨークまで2,700マイル(約4,345 km)の道のりを57時間48分で走破し、大陸横断を果たした、と報じられました。思わず、子供の頃に夢中で見ていた「ナイトライダー」というアメリカの特撮ドラマ(人工知能K.I.T.T.を搭載し、喋るスーパーカーが、主人公・マイケルと共に悪者を退治する勧善懲悪もの)を思い出しました。凄い時代になったものです。

 近い将来、きっと日本でも一般的な移動手段として、自動運転車が普及する事になるでしょう。過疎地域における高齢者が、安全かつ快適に移動する事も出来る筈です。渋滞や事故の心配もなく、誰もが優良ドライバーになれます。更なる未来には、皆様も愛車(の人工知能)を相手に機知に富んだ会話をしながら、ドライブを楽しんでいるかもしれません。「ナイトライダー」のマイケルとK.I.T.T.のように。