東海科学機器協会の会報

No.370 2019 春号

我が家の座敷亀

有限会社アルファシステム 伊藤もも子

 我が家には、家族になって24年になるミドリガメがいます。私が小学生の頃に、父が2匹のミドリガメをペットショップで購入して来ました。価格は2匹で980円でした。小さい内は性別がわからず、私はその2匹に『レモン』と『メロン』と名付けました。
 しかし、初めての冬を越し桜が咲く頃、レモンは冬眠から目覚めることなく亡くなってしまったのです。相方の死後、メロンの生活は大きく変わりました。ただ強く生きてほしいとの願いを込め、メロンは『ガメラ』と改名されました。
 私はミニチュアのログハウスなどを作る材料で亀専用のアスレチック場を作り、日々『強い亀』を育てるトレーニングをしました。『目を離したすきに死んでしまうかも…』と思った私は、亀を自分の寝床に持ち込み、一緒に寝るようになりました。水槽の外が彼にとって予想以上に快適だったのでしょうか。水槽内はいつも清潔に保っていましたが、体を左右に揺らし、ばしゃばしゃと水しぶきを上げ、『外へ出してくれ?』と言うことが多くなりました。こうして1日の半分を人間と同じスペースで過ごす座敷亀は誕生しました。推奨されている飼育方法とは大きく異なりますが、24年も生きてくれているので、この個体には合った育て方だったのでしょう。
 小指の先ほどの小さな脳みそなのに、家族も識別しているようで、特定の人の後をついて回ったりします。ガタゴトガタゴトと甲羅を背負って一生懸命についてくる姿は、子猫がたどたどしくつ
いてくる姿に引けを取らないほど可愛らしいです。音はとてもうるさいですが。家族の帰宅時に鍵が開く音がすると、『どれ、わたくしが出迎えてあげましょうかね』という風に玄関に出迎えに行きます。甘えている時はたれ目になりますし、終日留守にして長時間ひとりにされたとき時は、目は三角・への字口のお怒り顔で部屋の隅で拗ねていたりと、表情豊かなところも見せてくれます。
『亀なのに』『亀のくせに』『亀らしからぬ』という驚きや意外な発見は24年たった今でも尽きることはありません。
 『鶴は千年、亀は万年』と長生きの象徴である亀ですが、命あるものいつかは終わりが来ます。もうあと2年も経てば、既に他界した父より長く一緒に過ごしている家族になります。
『あと何年生きてくれるんだろうか…』
『私より長生きしたら、誰がお世話をしてくれるのだろう…』
そんな飼い主の心配をよそに、今日もガメラは貴重な冬の日光を甲羅に当て、穏やかな時間を過ごしています。