東海科学機器協会の会報

No.296 2003 夏号

[ TKK創立50周年記念事業レポート ] 講演会

東海科学機器協会 理事 各務 隆弘


11-11  創立50周年記念の講演会が、トヨタ自動車(株)取締役副社長の渡辺捷昭様を講師にお迎えして開催されました。テーマは、「ものづくりの原点~人と組織の活性化」。極めて示唆に富んだお話に、聴講者が真剣に聞き入る様子が印象的でした。そこで、講演の要旨をご紹介します。
<基本認識>
 前提としてものづくりへの危機意識を持つ必要があるが、決して悲観的であってはならない。この時代は大きな第三の変革期を迎えている。すなわち第一は明治維新の近代化思想、第二は第二次大戦後の民主主義への変換期であり、現在は第三のすべての構造改革の時代に入った。
 これは現存するシステムを残しながら改革を実行する困難さが潜んでいるが、まさに技術開発を主体とした地球規模の競争になっていることを認識すべきだ。キーワードは、情報・環境・安全。
<日本のものづくり>
 製造業は日本経済・国民生活を支える基幹産業だが、世界に立ち向かうのは技術開発力、コスト競争力、そして「人」である。とりわけ人の知恵、工夫、努力なくして克服は不可能。海外生産は増加傾向にあるが現地の経済発展に寄与することは必須だが、その基地はあくまでも日本でなくてはならない。
 要は「良品、安価、迅速を旨とする、世のため人のための企業」でなくてはならない。結局、世界各国の自動車メーカと対峙していくためには「人の力」しかない。
<組織の活性化>
 自ら元町担当になった時の工場長としての心得は、
〔1〕目標を設定
〔2〕皆のやりたいことの後押し
〔3〕前例のないことをやる
〔4〕会社のルールを破る
〔5〕人と金を集めること
であったが、「自立」、「自律」を備えた社員一人ひとりが主役であった。
 当たり前のことを当たり前に徹底して実行する一人ひとりの意識改革が、組織の活性化の原点に他ならない。