東海科学機器協会の会報

No.314 2007 新年号

[ サイエンスコーナー ] RoHS指令対象物質の試験法について

株)島津製作所 地球環境管理室 寺尾穣二


1.はじめに
RoHS指令(*)は、欧州連合(European Union)で2006年7月に施行されたが、適用除外物質は順次改訂され、カテゴリ8(医療機器)、カテゴリ9(監視・制御機器)の扱いは未決など現在も多くの不確実な問題を抱えている。指令発効後最大の関心事、最大許容値の問題は、2005年8月の告示により、鉛・水銀・六価クロム・ポリ臭化ビフェニール(PBB)・ポリ臭化ジフェニールエーテル(PBDE)については均質材料で重量比0.1%、カドミウムについては均質材料で重量比0.01%の最大濃度値が許容されなければならない事で決着を見た。しかしながら、その試験方法については、欧州委員会、技術適用委員会(TAC:Technical Adaptation Committee)で議論されている様子は無く、国際電気標準化委員会(IEC:International Electrotechnical Commission)で検討されている試験方法が事実上の標準となる可能性が高い。

(*)Restriction Of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipmentの略称で「電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令」と和訳される。電気・電子機器に含まれる危険物質(Cd、 Pbなど)を規定し、物質の使用を禁止する主旨の指令のこと。

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2.RoHS試験法の国際標準化の動向
 IECは、国際的な試験方法を提供するために、2005年3月に環境対応を討議する技術委員会で3つのWGからなる新環境TC(TC-111)を発足させた。RoHS試験法は、この中のWG3で検討されており、日本からは4名の委員が参加している。経産省の指名を受けた弊社からも委員が参加しており、試験法作成の中心的役割を果たしている。 IEC-WG3で作成された国際技術標準化案(CDV)は、JBCE(Japan Business Council in Europe在欧日系ビジネス協議会)がEU環境委員会へ提案した試験法を参考に、蛍光X線によるスクリーニング分析とその他分析法による精密定量の2段階方式を基本としている。試験対象試料については、RoHSの法的定義・解釈には踏みこまないことを前提とし、「均質材料」をそれぞれ高分子材料、金属材料、電子部品類の3つに分類している。
 CDVは、2006年10月6日に第1回の投票が行われたが、6価クロム分析と臭化物難燃剤に関する分析の再現性・信頼性が低いなどの意見が出され、否決された。これを受け、規格の分割・再提案などの検討に入ったため、内容修正の可能性が出て来た。その後、11月に北京で実施されたWG3国際会議において、UVによる6価クロムの分析及びGC-MSによる臭化物難燃剤の分析を含めたCDVの再修正・改訂を行い、2007年2月までに開催予定の第3回IIS(International Inter-laboratory)での良好な結果を目指す事と成ったが、合意に至らなかった場合は、この2測定法をInformative Annex(参考情報)として扱い、第2回投票(時期未定)での国際標準化を目指す方向性が確認された。以上、RoHS試験法に関する国際規格の作成発行は、2007年以降と成る事が確実となった。尚、測定試料の採取方法ガイドラインは、PAS(公開仕様書)の形で2007年3月に原案が作成される予定である。強制力の有る「規格」では無く、3年間の期限付きで6年まで延長可能だが、その後規格化されるため注視する必要が有る。

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