東海科学機器協会の会報

No.314 2007 新年号

[ 会員だより ] 宝箱の中身

(株)ケット科学研究所 名古屋営業所 竹谷一美


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 「年を量ねると昔を懐かしむ?」と言われたりします。今年もまた一つ年を重ねたからではありませんが、今から十数年前のたわいもない私の学生時代の話をさせて戴きたいと思います。
 あれはまだ希望に胸膨らませた18の春。私はあらゆるサークル勧誘の中から、ユースホステルという聞きなれない言葉に関心を持ち、このクラブに入部を決心しました(女性が多かったのがホン卜の理由?ユースホステスでは決してありませんので…。ユースホステル部は全国にあるユースホステルを利用して旅行をする、という至って簡単な活動で、移動手段としてJRの鈍行電車を利用したり、「岬めぐりの~」の歌ではありませんが、地元のバスを利用したりと、経済的な面を十分考慮した計画で旅行をするというのが主目的となり…要は「貧乏旅行をワイワイ楽しく行こう!」と、そんな感じです。
 ここで他の宿泊施設と違うユースホステルの決まりを紹介します。まず、支配人さんをペアレン卜と呼びます。これは文字通り「親」という事で、ユースホステル自体が一つの家族という感じになります。ですから、ユースホステルにチェックインする時には「ただいま!」と言い、ペアレントは「おかえりなさい!」の返事。出発する時は「行ってきます!」で、ペアレントは「行ってらっしゃい!」となります。後は、食器は自分で洗う、毛布の畳み方は正確に、門限は遵守、もちろんアルコール厳禁等々、様々な制約はありますが、そこは値段の安さで我慢となります。
 全国津々浦々に足を運びましたが、何せ多感な年頃?なのでしょうか。私が旅をして感じた事をまとめた当時のノートがあるのですが、そこに書かれていた詩を恥ずかしながらご紹介したいと思います。これは鳴き砂で有名な丹後半島の琴引浜でのものです。
 鳴き砂は鳴かなかった/でも鳴いているに違いない/「キュッ キュッ キュッ」と 鳴き砂は鳴かなかった/でも泣いているに違いない/失われていく自然の中で
 現在、利用者数の激減でユースホステルの登録数は減少していると聞きます。私も社会人になってからは利用していませんが、人との触れ合いが希薄な世の中、違った形の家族に触れ合うのもいい機会かも知れません(決してユースホステル協会の宣伝マンではありませんので…)。
 あれから18年。今さらながら月日の経つ早さに驚くばかりですが、たくさんの思い出が詰まった当時の顔写真を貼ったユースホステルの会員証は、もっと年を重ね、もっと懐かしさが込み上げるその時まで、私の宝箱の片隅にそっとしまっておきたいと思います。